深い深い森の中でVol.2

さて、第2話。
結局は学園にいても何も変わらない…
そう思ったら…


はてさて。

「んにゃ〜今何時だと思ってるの…。」
まき絵さん。お願いがあるです。」
眠気眼の佐々木まき絵と違って綾瀬夕映の意志は変わらない。
とは言っても佐々木まき絵の部屋の前では同居人である和泉亜子に聞かれる恐れもあるので誰も来ないところへ移動する。
「お願いって…何? 」
ところがいざ言うとなると綾瀬夕映にも心の準備がないのかどぎまぎしてしまう。しかし、わかってくれるのは彼女しかいない。意を決して告げる
まき絵さん…私の"従者"になってください!! 」
「??? 」
一瞬考え込んでしまう佐々木まき絵。しかし、まき絵もわかっていたことかあっさり納得してしまう
「いいよ。で、やっぱり…行くの? 」
との問いかけに対して頷くだけの綾瀬夕映
「出来れば…今日中にはここを去るつもりです。」
「でも、家出すれば簡単にばれちゃうよ。アキラだって存在を消したつもりだけど朝倉さんのアーティファクトの前には無力だったし。」
「それについては対策は考えてあります。」
「その前に…。」
そういって何をするのかと思えば佐々木まき絵綾瀬夕映に対してキスをする。キスをされた綾瀬夕映は沸騰してしまう。
「何をするのですか!? 」
「だって、従者になるんでしょ。しっかりと契約だけはしておかないと…本当はファーストキスだったんだけれどもね。」
「…そうでしたね。まさかこんなことをするとは思ってもいませんでしたが…来れ! 」
そういうと綾瀬夕映仮契約カードが書籍に化ける。そして該当のページを開いて呪文をぶつぶつと唱える。
すると綾瀬夕映の足元には魔方陣が。
まき絵さん…魔方陣に入るですよ。」
「う、うん。」
そういって魔方陣の中に入り二人を光に包むが何も起こらない
きょとんとしてしまう、佐々木まき絵
「何も変わらないよ。」
「…この学園から私たちの存在を隠す魔法を唱えたです。これでここから出て行っても何も言われないです。」
「みんなともお別れ…だね。」
「仕方がないことです。」
そういってみんなが起きないうちに持っていく荷物の整理だけして学校を立ち去ろうとしたとき佐々木まき絵がとある部屋の前で立ち止まる。
「わからなくなっても親友だから…。」
「そうでしたね。」
立ち止まった先は明石裕奈大河内アキラの部屋の前。佐々木まき絵は厚紙にグロスで"ごめんね"とだけ書いてドアの下からそっと入れる。
「ゆえちゃんはお別れしなくてもいいの? 」
「行くだけ未練が残ってしまうですよ。」
「それも、そうだよね。」
そういって寮の廊下の端から窓を開けて屋根に上る。そして綾瀬夕映のほうきに佐々木まき絵が乗り込むと飛び上がる
ほうきは見る見るうちに高度を上げ学園は小さくなっていく。
そして、軌跡だけ残して住み慣れた学園を後にするのだった。




「ねぇねぇ、行く場所わかってるの? 」
すると例の書籍を開き地図を出す。
「ここです。」
それは学園から100kmはなれた深い森の中。
ここの中心に世界樹綾瀬夕映を呼んでいるらしい。
下を眺めるとうっそうとした森林が広がる。
「すごーい。」
感嘆の声を上げる佐々木まき絵だったが、綾瀬夕映はさびしそうな顔をする。
「なんだかさびしい感じがするです。それに…。」
「それに? 」
「私は森を護ることができるのでしょうか? 」
と、悩む綾瀬夕映の頭をなでる佐々木まき絵
「私がついていてあげる。そのための"従者"なんでしょ? 」
そういわれるとはっとする綾瀬夕映。しばらくしてにっこり。
「そうでしたね。」
程なくして二人はうっそうとした森の入り口に立っていた。
茂みを書き分けるとそれは森そのもの。しかしながら二人は暗い以上に何かを感じていた。
「森が…悲しんでる。」
「私も感じるです。」
時々聞こえる羽ばたきにびっくりしながら森の中を進む二人。
そしてひときわ大きな木の前にたどり着く二人
「これが…。」
「これが私を呼んでいた木ですね。」
しかし、その木は生気を失い今にも朽ち果てそうだった。
「この木が朽ち果てそうだからこの森全体が淋しかったのですね。」
佐々木まき絵は古木と綾瀬夕映を眺めながら考えごとを。
「何でゆえちゃんが選ばれたんだろう? 」
「私にもわからないです。でも、ここまで来たらもう引き下がれないですよ。」
そういって巨木に触れるとそのまま蔦が綾瀬夕映を包み巨木に飲み込まれてしまう。
「ゆ、ゆえちゃん!? 」
追いかけようとするが飲み込むスピードの方が速く手すら差し伸べることが出来なかった。それだけでなく辺りをふしぎな霧が包み佐々木まき絵もそのまま気を失ってしまったのだった。




「あ、あれ…。」
佐々木まき絵が気づいたのはそれからしばらくしてから。
何か様子がおかしい。でも、確認するすべがない。
慌てふためいて走っていると水音が。
川に自分の姿を映してびっくりする佐々木まき絵
「ち、小さくなってる!! 」
念のために服の中を覗いてみるが覗いてげんなり。
「ペッタン…。」
しかし、その後に我に返り巨木の方へ。
「ゆえちゃん、ゆえちゃん、ゆえちゃん!! 」
巨木をばしばし叩くが返事がない。
「どーしよう…。」
すると佐々木まき絵の頭の中に女性の声が…
「あなたにとって彼女はどういう関係なの? 」
「絶対に護ると決めたの。だって私はゆえちゃんの"従者"だもん! 」
「そう…。大丈夫よ。死ぬことはないから。彼女は今"試練"を受けているの。」
「しれん? 」
「そう、彼女はこの森の守護者になるための試練を受けているの。」
それを聞いてうつむいてしまう佐々木まき絵
「この森…さびしそう…。」
「あなたも…護るのよ。」
「うん! 」
頭の中に響く声に対して元気にこたえる佐々木まき絵
その数分後に考え込んでしまう。
「どうしたら良いんだろう…。」
と、さっき見つけた川まで行って考え込んでしまうがおなかが鳴り響き顔を真っ赤に。
川を眺めているとお魚が泳いでいる。
服が濡れるのもお構い無しにジャブジャブ入り込み魚と格闘する数分。
何匹かの魚を捕まえることが出来たが服はずぶぬれ。
とりあえず捕まえた魚を持って巨木の前までいく。
「どうやって食べよう…生のまま食べちゃったらおなか壊しちゃうし…。」
と、考え込んでいると近くに小枝が。
「あれれ? こんなところに有ったっけ? 」
と、考え込みながら小枝をつかむと暖かい感覚に包まれる。
「なんだろう…。」
すると聞いたことがある声が
「("火を灯す"魔法を使うのですよ。)」
「え、え〜と…。"プラクテ・ピギ・ナル・アール・デスカット! "」
そういって小枝を振ると小枝の先から火が。すかさず種火を作り枯れ枝を集めて焚き火にする。そのそばで取ってきた魚を焼き服を乾かすことに。
「たべる? 」
そういって巨木に話しかけるが反応はない。
「そしたら、これでも…。」
そういってお魚の骨を巨木のそばに埋めてニコニコ。
しばらくすると生あくびをしだす佐々木まき絵
「ゆえちゃん、おやすみっ。」
そういって巨木のそばですやすや眠るのだった




「なんなのでしょう…この感覚…暖かいです。」
綾瀬夕映は気がつくと巨木の中に取り込まれていた。
「私は…何をすればいいのでしょう? 」
「信じてあげて。」
綾瀬夕映若い女性の声が響く。すると外の映像が映る。
「!!?! 」
外に映っていたのは佐々木まき絵だが小さくなっている。
まき絵さんに何をしたのですか!? 」
「彼女に危害を加えるつもりはないわ。多分、この木の力。でも、彼女はあなたの帰りを待っているわ。」
「私の事を…? 」
その証拠に佐々木まき絵はバケツに水を汲んでは巨木にせっせと水を与えたり、花を植えたりして古木に力をためようとがんばっている姿が映し出される。
まき絵さんが私のために…私は何が出来るのでしょうか? 」
「あなたは魔法の才能があるだけじゃない。あなたならきっとできるはず。」
「私に何が出来るかはわからないですががんばってみるです。」
すると綾瀬夕映の体が光る。
「暖かい…。」
そのぬくもりを感じながら深い眠りにつく綾瀬夕映
「ゆえちゃん、ゆえちゃん!! 」
誰かに揺り動かされてやっと目が覚める。
「あれ…ここは? 」
「あのね、この森を探索していたら見つけたの。ここだったら雨もしのげるよ。」
「感謝するです…。」
と、にっこりするが佐々木まき絵を見てくすくす。
「どうしたのですか。その格好。」
綾瀬夕映から見た佐々木まき絵はまるで小学生。
当の佐々木まき絵はなぜか膨れてぽかぽかする
「ゆえちゃん、ずる〜い!! 」
「何がですか? 」
聞き返すともじもじする佐々木まき絵
「それ…その…ゆえちゃん、大人になっちゃって…。」
それを聞いてくすくすしながら佐々木まき絵の頭をなでなでする綾瀬夕映
「私みたいになれるですよ。それよりも…。」
「それよりも? 」
「この大きな森を守れるのは私たちしかいないです。二人でがんばっていくですよ。」
「ウン! 」
佐々木まき絵はにっこりして頷いたのだった

補足
佐々木まき絵は子供の姿になっていますが普段のssと違いフルネームです
何ででしょう? 


それとともに綾瀬夕映は古木の力を借りて成長しています
次回はそんな森を守ることになった二人の日常を。


ちなみに合併号休載が12/29にもありますがクラスメートssを。